私たちの正倉院

船小屋チャイハネ

チャイハネも人気が出ていたのだけれど、1年で賃貸期限が来て出て行かざるをえなくなったが、向かいの稲垣さんが店として貸してくれた。もともとは船具問屋ということで、手を打って喜んだ。船小屋も民芸にふさわしい建物ではないか。
漁業組合の倉庫などを思い出しながら、船小屋らしく改装したのだが、風情を出すにはボートを飾りたい。木造のボートにこだわったところ流通しておらず、金沢八景の野島付近の運河で放置されている木造ボートを見つけた。
そこでウンチのうかぶ運河を泳ぎ、絶滅寸前の「民芸品」を確保した。
黄色や空色のペンキがはげてきていい感じの風情があるボートだ。
ボートを設置したところ、全体が一隻の船に見える。まるで街中に出現したフォークロア の船だ。

「タイムマシーンに乗ったような妙な気分になる」

二階にはオーナーの稲垣さんが暮らしていたのだが、その孫娘の泣き声が聞こえてこようと、ボートの後ろに洗濯物が干してあろうと、この店の民芸的な味わいは減殺されるどころか、もっと強化されていたと思う。晴れた日には真ん中につるしてある真っ赤なインド錦の旗が、刺繍された鏡の細かい破片をキラキラと反射しながら風にゆったりと翻った。